任意整理と民事再生(個人再生)の違い
任意整理と民事再生は、共に債務を減額することで返済を容易にするための手続きとなっています。
では両者の違いはどのような点にあるのか、どちらを利用した方が良いのかといったご質問をいただきます。
当ホームページでは、任意整理と個人再生の違いについて解説をしてきます。
◆任意整理と個人再生の違い
任意整理と個人再生のそれぞれの違いについて比較をしていきます。
●手続きの利用条件
任意整理と個人再生は、借金を減額した上で返済を続けていくことが前提となっているため、利用するためにはそれぞれ条件があります。
任意整理は簡易的かつ裁判所の介入を必要としない手続きであるため、利用するためのハードルが少し低くなっているのが特徴となっています。
個人再生は利用条件をクリアしたとしても、裁判所や個人再生委員が個人再生を不認可としてしまう可能性もあるため、任意整理と比較するとやや厳格な要件となっています。
・任意整理
安定した収入があり、今後も返済を継続する意思があること、の2つになります。
・個人再生
任意整理の条件に加えて、住宅ローン以外の借金総額が5000万円以下であり、継続的に収入を得られる状況にある、という条件となっています。
●減額できる金額
任意整理と個人再生は、それぞれ返済額を減らしていくための手続きであるということを説明しました。どちらも同じ内容となっていますが、減額の対象がそれぞれ違っています。
任意整理の場合であれば、将来利息や遅延損害金をカットすることで、元本のみの返済をしていくものとなっているため、利息が膨らんでしまった人向けのものとなっています。
他方で、個人再生の場合は、利息も元本も全て一律に減額をすることによって、大幅に減額を見込める手続きとなっているため、元本が大きくて返済が難しい方向けのものといえるでしょう。
・任意整理
将来利息等の利息や遅延損害金をカットし、元本を全額返済することとなります。
過払金があれば減額の対象となることもありますが、基本的には債権者との交渉によって変わってきます。
・個人再生
任意整理とは違い、利息や遅延損害金も減額の対象となっています。
減額される額の割合としては、借金の額によって変わってきますが、任意整理と比較すると大幅に減額を見込める可能性があります。
どれくらい減額されるかについては、当ホームページの「民事再生(個人再生)とは」を参照していただけると幸いです。
●手続きと返済にかかる期間
債務整理手続きにはある程度の時間がかかります。
任意整理は簡易な手続きであり、交渉をする債権者が傾向としてそこまで多くないため、最短でも3ヶ月程度となっています。
他方で個人再生の場合であれば、裁判所を介して手続きを行うため、半年から1年程度がかかるようになっています。また、任意整理の場合であれば減額の対象とする債務を選択することができますが、個人再生の場合はすべての債務を減額するため、多重債務者であれば、交渉する債権者の数が任意整理よりも多くなっています。
もっとも両者の共通点は、債権者と話し合いを行うことで、返済までの期間を設定する点にあります。
ただし、任意整理の方が緩やかに認められるのに対し、個人再生は原則として3年となっているため、少し厳しめの要件となっている点が特徴です。
・任意整理
専門家に依頼をすると、依頼から債権者との和解まで3ヶ月から半年ほどが目安となります。
・個人再生
申立てをしてから返済開始まで半年〜1年程度かかります。
●専門家にかかる費用
任意整理の場合には、債権者との交渉が主な弁護士の業務であり、交渉先の債権者も比較的少ない傾向にあることから、相対的に弁護士にかかる負担が小さくなっています。
そのため、数ある弁護士への依頼の中でも比較的安価な額で済ませることができます。
それに対し、個人再生は弁護士にかかる業務量の負担が任意整理よりも大きくなっており、裁判所への出向などもあるため、任意整理と比較するとかなりの額が必要となります。
任意整理も個人再生も、減額の債務を返済する必要があるため、弁護士費用を一括請求せずに、分割で支払っていくことができる事務所もあるため、相談の際に確認をしておくと良いでしょう。
・任意整理
弁護士や司法書士などの専門家に依頼をする場合、安くて2〜3万円、一般的な相場であれば4〜5万円程度の費用がかかることとなります。
・個人再生
専門家に依頼をすると、30〜50万円ほどかかることとなります。
マイホームを維持できる住宅ローン特則という手続きをした場合には、これに加えて5〜10万円ほどの費用がかかることとなります。
●手元に残せる財産
債務整理手続きというと、家具や電化製品、車やマイホームなどを全て差し押さえられて、財産を失ってしまうというようなイメージを思い浮かべている方もいらっしゃると思います。
しかし、ほとんどの財産を手放さなければならないのは、自己破産のみであり、自己破産であっても、家具や電化製品といったような日用品などについては、差し押さえられることはありません。
また、任意整理や個人再生やマイホームなどローンが残っているものについては、差押えの可能性がありますが、基本的に財産が差し押さえられることはありません。
任意整理や個人再生での個人の財産への扱いは以下のとおりとなっており、ほとんど違いはありません。
・任意整理
基本的に家電や家具などの日用品や、高価な土地や建物などを所有している場合であっても、それらを処分しなければならないわけではありません。
ただし、分割やローンで購入しており、完済していない財産(マイホームや車)については債権者に回収される可能性があります。
・個人再生
任意整理と同様に基本的に財産が処分されることはなく、マイホームなども差し押さえられることなく、維持できる仕組みがあります。
●保証人への影響
金銭を借りた際に、保証人を設定したのであれば、債務整理をした場合には、保証人が返済を強いられることとなります。
任意整理か個人再生をした後であっても、返済期間にしっかりと遅滞なく返済を続けることができれば、保証人が返済を強いられることはないので、ご安心ください。
・任意整理
債務の減額の対象を選択することができるため、保証契約が締結されている債務を対象から外しておくことで、十分に対策が可能となっています。
・個人再生
必ず全ての債務が対象となるため、借金をした本人が返済できない分に関しては、保証人が請求される可能性があります。
●信用情報に載る期間
債務整理手続きを行うとブラックリストに載ってしまうという話を聞いたことがある方がいらっしゃると思います。
このブラックリストとは、俗称であり、正確には情報信用機関と呼ばれるものとなっています。
情報信用機関に事故情報が掲載されると、クレジットカードを利用できなくなったり、新たにクレジットカードを作成したり、分割払いやローンを利用するといったことができなくなるため、注意が必要です。
事故情報が掲載されてしまうことのデメリットの詳細については、当ホームページの「民事再生(個人再生)後の生活」という記事を参照していただけると幸いです。
・任意整理
信用情報機関に事故情報が登録されるのは、手続き開始時もしくは、完済から5年程度となっています。
どの時点でカウントが開始されるかは信用情報機関によって異なります。
・個人再生
信用情報機関に事故情報が登録されるのは、手続き開始時もしくは、完済してから5〜10年程度となっています。
こちらもカウント開始の時期は、信用情報機関によって異なります。
●官報への掲載の有無
個人再生を行うと官報と呼ばれる国の機関紙に、個人再生を利用した旨が掲載されてしまいます。
もっとも掲載されるのは個人再生と自己破産手続のみであり、任意整理は掲載がありません。
その理由としては、個人再生と自己破産は裁判所を介した手続きであるのに対し、任意整理は裁判所の介入を必要としない手続きであるからです。
・任意整理
上述の通り裁判所を介さない手続きなので、官報に掲載されることはありません。
・個人再生
裁判所に申立てを行う手続きなので、官報に氏名や住所が掲載されます。
もっとも、一般の方が官報を閲覧する機会はなかなかないため、周りの人に官報を介して、個人再生をしたことがバレることはほとんどないといえます。
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